札幌高等裁判所 昭和24年(新を)143号 判決 1950年1月24日
被告人
坂本源一
主文
原判決を破棄する。
被告人を罰金二万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
但し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
木田弁護人の控訴趣意について。
本件犯罪当時における白下糖を含む含蜜糖の販売價格の統制額を定めた昭和二十二年六月十七日物價廳告示第三百号(同告示の價格表は昭和二十三年十二月二十一日物價廳告示第千二百八十二号により改正された)は同二十四年六月十五日物價廳告示第三百九十七号により廃止され、更に同告示により新に右含蜜糖の販売價格の統制額が指定されたが同年十月二十一日物價廳告示第八百七十六号により右告示第三百九十七号の一部が改正され右含蜜糖から本件白下糖が除外され、結局、本件白下糖については販売價格の統制額が廃止された。しかしながら物價統制令は昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツクム」宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基き制定せられ、その目的について同令第一條には「本令は終戰後の事態に対処し物價の安定を確保し以て社会経済秩序を維持し國民生活の安定を図るを目的とす」と規定し、その第三條第一項本文には「價格等に付第四條乃至第七條に規定する統制額あるときは價格等は其の統制額を超えて之を契約し、支拂ひ又は受領することを得ず」と規定して統制の方式を定め、更に同令第四條、同令施行規則第四條によれば物價廳長官は告示によつて右統制額を指定することができることになつているのであつて、これらの規定の趣旨から考えると物價統制令の存続する以上は同令第四條に基く物價廳長官の告示に改廃があつても、その改廳前における行爲については刑法第六條による比照をなさず当然その行爲当時の告示が適用されるものと解する。したがつて行爲当時の告示を適用した原判決には所論のような違法はない。
(註、本件は刑量不当にて破棄自判)